わたしたち人間はもちろんのこと、生き物には壊れた組織を修復してくれる再生能力があります。
ケガをしたときの傷が速やかに治っていくのもこのおかげです。
この再生能力が特に高いとされているのがカエル、イモリ、サンショウウオの両生類。
その中でもイモリの再生能力は特別だといいます。
成体になっても再生能力を持ち続けるイモリ
一般的に、両生類の幼体期では、高度な再生能力で完全な状態に修復することが可能です。
たとえば肢の生えたオタマジャクシ。
肢が切断されても、しばらくすれば指まで完全に元通りに再生します。
ですが、変態後はその高度な再生能力を失ってしまいます。
カエルは肢を切断しても、断面が盛り上がる程度で指まで再生されることはありません。
ところがイモリは違います。
幼体期に引き続き成体になってもその高度な再生能力を失いません。
しかも、年齢に関係なく、いくつになっても何度でも再生できるというから驚きです。
イモリはなぜ成体になっても肢を再生できるのか?
イモリだけが変態後も高度な再生能力を持ち続けることが報告された1769年以来、その仕組みは未解明でナゾのままでした。
ところが、250年近く経った2016年3月、筑波大学などの研究チームから、肢の再生の仕組みの一部が明らかになったことが発表されたのです。
その内容によれば、変態前と変態後で再生の戦略を切り替えていることがわかったというのです。
幼体期のイモリは、筋肉のもとになる幹細胞の働きによって肢を完全に再生します。
ですが、変態後のイモリは幹細胞の働きでは肢を再生しません。
切断された面の筋細胞が未分化の状態に戻り、その脱分化した細胞を使って再生しているのだそうです。
結果、イモリは筋細胞を脱分化させることができる能力を獲得したため、ほかの両生類とは違い、成体後も肢を完全に再生できるのだと研究チームはみているようです。
まとめ
どのように脱分化がおこなわれているのかなど、くわしいメカニズムが解明されていないのが現状ですが、今後、再生医療につながることが期待されています。